2011年06月22日

53 パスのパターン活用(2)

 学生時代、たまに来られた戦前、京大の全盛時代を築いた先輩の方々のパスは見事であった。全国制覇を続けた旧制神戸一中出身の名選手たちで元日本代表クラスもいた。練習不足でさほど走るわけでもないのに相手の間を滑るようにパスをかわして行く。ハイレベルの選手は自信があるので余裕があり、良い意味で頑固、納得できない事や中途半端はしない。いくら格が違うにしても不思議なくらいで、当時悩んでいた私は大いに憧れた。
 パス出しは得意な方で、病気で2年間休んで復帰した松江高校二年生の西日本インターは位は私のパスから全得点が生まれて創部以来最初で最後の準優勝を遂げる事ができた。
 大学でも最年少の新入生で一軍になれたものの、高校で一目置かれていたのが指図される立場になり、上級生、同期生は幅員や浪人あがりばかり、年長者たちの中でやりづらくてプレースタイルの違う上級生とパスの呼吸が合わずよく叱られて困っていたからである。
 それが成る程そういう事か!とわかったのは、愚かにも20年近く経ってコーチとして教える側にまわり子供たちと一緒にプレーするようになってからであった。
 昔はどこでも速攻(ないし強攻)一点張りで、指導者、OBや上級生が、速く!パスだ!走れ!と叫んで、敵に妨害されないうちに早めのパスとダッシュで進攻しようとした。
だが敵が守りを固めるとそうはいかない。いつ何処へどんなパスを出すか、敵に隙があれば直ちにそこをつけばいいが、無ければかわしてパスコースを作って出さねばならない。でもタマがかかるようなら拙いのでほかへボールを回す。味方はそれを察知して行動し、マークを外してパスをもらえる所へタイミングよくスタートする。駆け引き工夫、味方との意思の疎通、タイミングを合わせる知恵と戦術力が必要で、それに、観察、鋭い感覚、直感、読み、的確な判断、素早い決行が不可欠だから、機敏に頭脳を使わねばならない。
 先輩たちは、こうすれば良い、今いける、という要領やコツを早くから体得していたに違いない。私はそれが多少わかってはいたが、不十分でしっかり身についてなかったのだ。


[失敗を繰り返さない為に]
 この苦い経験と後悔から、私はコーチとして、子供たちに自分の二の舞をさせてはいけない、是非あの名手たちのように周りがよく見えて敵味方の気配、動向を感知して好判断、駆け引き工夫ができる選手に育てようと決意した。
 だが、よそのように口うるさく教え込み叱って言うとおりにさせるのでなく、ミニゲームや実戦的練習で彼らが面白くて熱中し、自分から自由に頭脳を働かせてプレーして上達し要領を体得できるように図った。叱ると、叱られないようにする事に懸命になって、考えてプレーするどころでない。自分で挑戦し経験して体得するのがベストだからだ。
 狙いが的中して早くも小学生で周りが見えて考えてプレーし、敵に囲まれても落ち着いて上手くパスを交わせるようになった時は嬉しかった。そして正直言って自分もこうして育てられていたら、彼らのように上手くなれたのにと残念であった。
 遅攻的なパスは教え教わるだけでは駄目で、選手がミニゲームや実戦的練習で自ら仕掛けて経験を積んで身につけていかねばならない。選手の自発自動自得だから、従来の指令どおりにさせる他発他動教育を止めて、自由な自立自発創造の体験教育をしないといけないのである。難しい事ではない。誰でもやればできる!子供たちを信用してやることだ。


[練習法]
62(A) 試合で選手は隣の味方と三角形の位置をとるのが基本で、そこからのパス練習法を考案した。BACが逆三角形でパスを回してから、底のAは左前のBにパスして、前のBC間を突っ切り前進、Bからパスを受ける。CはAの左横へ進みサポート、Bがフォローし、パスを回しつつ逆三角を作り直す。次は底になったBがCにパスしてCA間を突っ切りCからパスを受けて、という具合に続けて前進して行って、ワンツーからシュートで終わる。最初に戻って今度はAが右前のCにパスして前進。BはAの右横へ。
62(B) AはBにパスして受け手Bの外側を前進、BはCにパスして、CがAにパス。BはAの右横へ前進してサポート、Cはフォローして、パスを回しながら逆三角を整える。次は底になったCがAにパスして受け手Aの外側を前進、AはBにパス、BはCにパス、という具合に続けていって、最後はワンツースリーパスからシュートで終わる。最初に戻ってAはCにパスしてCの外側を前進して開始。CはBにパス、BがAにパス。
62(C) AはBにパスして反対側のCの外側を前進、BはCにパス。BはAをサポートしてAの横へ動いてからAからパスを受けて、Cがフォロー、三角形を整え、同様に続けていきシュートで終わる。最初に戻ってAはCにパスしてBの外側を前進して開始。
62(D) 逆三角でパス回し。AはBC間でパスが交わされている時に、BかCの外側を前進して、次か、次の次のパスをもらう。すぐに逆三角を整えパスを回しているうちに、底の選手が同様に前進して、という具合に続けて行ってパスからシュートで終わる。
62(E) 以上でBCに敵Xがつき軽く妨害。余分なパスやドリブル、1:1が入ってもよい。
62(F) 以上のパスワークを必ず使ってミニゲーム。これからの得点だけ認める。

◎三角形の向きや大きさを変えてもよい。後方からの追い越し突破、味方の外側を回る動き、味方同士パスしている間にスタートする事などを覚えて試合で使おう!


[クリスクロスパス]
63(A) BACが浅い平らな逆三角形を作る。底のAはBにパスして受け手Bの外側を前進、BはAではなくCにパスして受け手Cの外側を前進、CはBでなくAにパスしてAの外側を前進、これを繰り返して進みシュートで終わる。
 ♯機械的プレーや早く速くは駄目!タイミングよく行動して、味方が遅れていたら試合中のようにドリブルして待ってパス!緩急の変化をつけ、ボールを迎えに近寄ること!
63(B) 必ずこれを使うことにしてミニゲーム。これからの得点だけ認めてゲーム。
◎ 特長はパス・アンド・ゴーで受け手Bを外側から追い越すAは、Bをワンツーでなく、間に1人、Cが入りワンツースリー、次の次のパスをCからもらう事だ。Bは無造作にCにパスしないで、追い越していくAにパスするフェイントから反対側のCにパスするといい!Aをおとりに使うわけで遊び心というかそんな工夫をして欲しい。


[クロスした動きからバックパス]
64(A) 逆三角BACでパスを回してから、AはBにパス、BはCにパスして斜め右前方へ走る。CはAにパスを戻して斜め左前方へBとクロスして走る。残っていたAはBにロングパスして前進、Bは横のCにパス、Cは上がってくるAにバックパスしてシュートさせる。AはCにロングパスしてもよい。
64(B) BCに敵Xがつき軽く妨害、Aは前進したBかC、どちらか有利な方にロングパス。
64(C) これを使った得点だけ認める条件付きミニゲーム。


[3人横パス]
65(A) 三人が横に浅く広がり横パスで前進、必ずポジション・チェンジを入れる。適宜ドリブルやフェイント。キーパーが守る大ゴールへスルーからシュート。
65(B) 敵がついて3:1で行う。オフサイドあり。
65(C) それを使った得点だけ認めてミニゲーム。

[パスゲーム]
66(A) 四角の中で4:4以上。パスが人数の倍、続いたら1点。同じ2人の間の往復パス(ダブルパス)は1本と数えて次は必ず他の選手にパスしないと反則。
66(B) ツータッチとか、利き足でない方でパスと指定。但し競り合いで止むを得ない場合、ボールタッチが少し増えてもよい。パスできるのに不要なボールタッチやドリブルは反則。
66(C) ゴールありでミニゲーム。パスが指定数続いてからのシュート得点だけ認める。
66(D) シュート得点とパス回数得点の両方ありで。素早いルックアップ、パスをもらう動き、次の、さらに次の次のパスや状況への読み、予測が必要。
 ♯いわゆる持ち過ぎや、ボールに触れると必ずドリブルするとか、何回もボールタッチしてからでないとパスしない、などの癖を直すのによい。

[スクリーン・パス]
67(A) 3人組む。Aは敵Xに背後からマークされてスクリーンしながら斜め外へドリブル。BはAと対面するように近寄り、AはXをブロックしながら、Bとすれ違いざまに敵から遠いBに近い方の足でBにボールを渡し離れる。BはAに近い足で受けてドリブル。原則としてAが右ならBも右で。左足ならBも左で。
67(B) AはBにパスと見せてドリブルでXを振り切る。
67(C) これを使った得点だけ認めてミニゲーム。


<音楽、舞踏とサッカー>
 余談だが、ブラジルのサッカーとサンバなどを例にして、各国のカッサーはそれぞれ民族固有の音楽や舞踏と関連していると言われるが、日本固有のと言われると困る。民謡、音頭なら盆踊りだが遅すぎるし、世界中で日本しかないすり足はスポーツとは別世界のもので、侘(ワ)び寂(サ)びがわかる地球上唯一の民族だから、明治まで日本はスポーツと無縁な国だったのである。ちなみに同じ島国でも沖縄民謡と踊りは漕ぎ進む小舟の縦揺れ、ハワイのフラダンスは波間に漂う小舟の横揺れだという。
 そこで実験的に、サンバ、ルンバ、ワルツなど曲を流して、ドリブル、パス、ミニゲームなど実際にプレーしてもらって音楽とサッカーの関係を観察したが、曲のリズム、テンポよりもプレーが速くて曲と合わなかった。音楽はプレーと無関係で邪魔になったという。日本の中高生でこうだから、まして外国選手は実験するまでもないだろう。
 問題のブラジルサンバは名曲サンバ・ブラジルのような普通のサンバと違う。踊りも社交ダンスのサンバではない。有名なリオのカーニバルでタタタ、タタタと忙しく小刻みに足を踏み替え踊っているのがブラジルサンバで、サッカーの足技に役立つ。でもブラジル選手たちは試合に行くバスの中でサンバで大騒ぎしながら試合場へ乗り込むが、それと試合は別で見てのとおり、彼らのプレーはリズミカルだがブラジルサンバのリズムではない。
 以上、各国の選手はそれぞれの音楽や舞踏に馴染んで育ったのでそのリズム、テンポ、身のこなしなどが身につきプレーに役立っている者もいるだろう。だが断片的にそういう事があっても、試合中、ずっとそのリズム、テンポでプレーを続ける事はない。国や民族の音楽舞踏はサッカーに何らかの関連はあるが直結的関係はない、という結論になった。
posted by HFC at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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